「ハイブリッド資金調達」で中小企業・スタートアップ企業の資金調達難を解決する

一般社団法人日本財務経営協会が提供するサービスのひとつ、「ハイブリット資金調達」について、代表の井上がSAKURA United Solution 資金調達支援担当の小澤智裕にインタビューを行いました。ハイブリッド資金調達とはなにか、なぜハイブリッド資金調達が必要なのかを解説致します。また、ハイブリッド資金調達の成功事例についてもご紹介します。

 

※本稿は、2022年夏に刊行予定のビジョンブックから内容を一部抜粋し、再構成したものです。

ハイブリッド資金調達が生まれた背景にある「資金調達の難しさ」

井上――小澤さんは、地方銀行で約35年の勤務経験があり、その後、中堅中小企業で財務、経営企画管理の仕事もされていました。つまり、お金を貸す側と借りる側の両方の経験と視点をお持ちなわけですが、この予測困難な時代に、中小企業・スタートアップ企業のみなさんが銀行・金融機関からの融資(デッドファイナンス)を活用する意義や、最近の金融環境について教えてください。

 

小澤――デッドファイナンスでの資金調達を行う意義として、「資金ショートの防止」「銀行・金融機関との信頼関係づくり」「財務内容の客観的評価」「低金利」があると考えています。

 

会社は黒字であっても倒産してしまうことがあります。ですから経営者の方は、資金調達に対して真摯に向き合わないといけないと思います。会社を長く存続させるためには、資金ショートしない会社経営が欠かせません。どんなに良いビジネスであっても、続けられなければお客様に商品やサービスを届けることができませんし、雇用を守ることも創出することもできなくなってしまいます。早め早めに資金調達を行い、資金を厚くしておくことが重要でしょう。そのため、銀行・金融機関からの借入は必須です。これは、エクイティファイナンスを主に活用しているスタートアップ企業であっても同じであると考えています。

 

いざというときに相談できる関係を、普段から銀行・金融機関と築いておく必要があるでしょう。銀行・金融機関が評価してくれる、良い決算書をつくることも重要です。数年で銀行担当者は入れ替わりますが、嘘をつかない、約束を守ることで、いざというときに銀行・金融機関が相談に乗ってくれるようになります。少額であっても、すでに融資の返済実績があれば、銀行・金融機関も相談に応じやすくなるわけです。

 

また、返済実績が積み重なっていくと、銀行・金融機関が会社を客観的に評価してくれます。良い決算書をつくり、期を重ねていくことで信用格付けが上がり、経営資源が増えます。デッドファイナンスのなかでも、最初は信用金庫からスタートし、地方銀行やメガバンクへと取引金融機関構成を増やしたり替えたりすることができるようになります。投資家も客観的に会社を評価できるようになるため、デッドファイナンスの先にはエクイティファイナンスもあるのです。デッドとエクイティを組み合わせることで、資金調達がさらにスムーズになるでしょう。

 

加えて、日本は長年にわたり低金利が続いています。この金融環境を活かさない手はありません。借りられるときに余剰資金として借りておき、いざ必要になったときに資金を有効に使えるように準備しておくことも、会社の備えとして大切だと思います。

 

しかし一方で、資金調達の現場では「大量のコロナ融資のリバウンド」が起きている現状があります。そのため、融資審査の厳密性が高まり(あるいはコロナ前に戻り)、プロの目線での資料作成や銀行交渉が欠かせなくなっています。

 

井上――そこで、貸す側のプロでもある小澤さんのノウハウや知見が活きるわけですね。

 

小澤――はい。政府系金融機関の融資審査が厳しくなり、併願が必要になりました。併願=ハイブリッドという意味で、「ハイブリッド資金調達」と名付けています。結果、「両方通る」「片方通る」「両方落ちた」などの事例がありますが、全体として融資審査の通過率は上がっています。

 

井上――小澤さんの仰るとおり、デッドとエクイティを組み合わせることで、より有効な資金調達が実現できると思います。エクイティファイナンスでは、私たちはファンディーノさんという株式投資型クラウドファンディング企業と提携しています。さらなる成長サイクルを創ることが、このアライアンスでできるはずです。

 

特にデッドファイナンスについては、グループ全体で継続的にご支援し、スポットの資金調達支援だけでない本質的な経営支援ができると考えています。

 

小澤――私もそう思います。グループ全体で財務経営支援を継続的に行うことで、銀行・金融機関との関係もより良い関係で育てていけるはずです。

ハイブリッド資金調達とは

井上――政府系金融機関と民間金融機関(保証協会付き)の併願=「ハイブリッド資金調達」について、詳しく教えてください。

 

小澤――政府系金融機関は、日本政策金融公庫の創業融資のことで、民間金融機関は、登記上の本店近くの信用金庫での保証協会付き融資のことです。丁寧に対応してくれる担当者が多いのが信用金庫で、成功確率も上がります。

 

当初、併願=ハイブリッドは政府系金融機関と民間金融機関(保証協会付き)の組み合わせを想定していましたが、「政府系と民間」だけではなく、「民間と民間」「民間と制度融資」「デッドとエクイティ」と、組み合わせのバリエーションが広がってきました。お客様のニーズや経営状況に応じて、ベストな組み合わせをご提案しています。

 

井上――ハイブリッド資金調達の審査通過率が高いのは、どのような点に理由があるのでしょうか。

 

小澤――長年の地銀勤務の経験から「銀行・金融機関目線の資料作成」ができること。また、中堅中小企業での勤務経験から「お客様目線の交渉」ができることが理由であると思います。

 

私は、稟議書のつもりで資料を作成しています。そのため、銀行の担当者は「これだけ揃っていると助かります」と言ってくれます。担当者がどんな資料を望んでいるか、どんな資料があれば稟議書を書きやすいかを私は熟知しています。

 

また、お客様目線でも捉えることができるため、動きの遅い担当者には積極的にリマインドして進捗確認します。スピーディーな対応を常に心がけることで、資金調達の成功確率を上げています。

3行の融資審査に通過!ハイブリッド資金調達の成功事例

井上――ハイブリッド資金調達の成功事例についても、可能な範囲で教えてください。

 

小澤――はい。直近では、アプリ開発会社からご依頼があり、3つの銀行・金融機関から融資を受けることに成功しました。その企業様は、創業当初にエクイティ(社債)で調達済みでしたが、資金を開発費用に使用しており、これからマーケティングなどが必要という状況でした。そこで、デッド(借入)も活用することをご提案させていただきました。

 

日本政策金融公庫、信用金庫、制度融資(シニア起業サポート資金)の3つを併願し、無事に3つとも審査に通過致しました。調達できた資金は、社内体制の整備などにも充てていく計画です。また今後は、さらにエクイティの追加も検討されています。

 

本件の成功事例は、デッドとエクイティを組み合わせる。さらにデッドとデッドを組み合わせる資金調達の良い成功パターンだと考えています。このような手段があることを、もっと多くの経営者の方に知っていただきたいです。

 

資金調達力は経営者力です。事業を成長させるためには、資金が絶対に必要で、資金調達は経営者にしかできないことです。資金調達なくして企業の成長はないと思います。

お客様に本音を話していただける信頼関係を構築

井上――小澤さんが、お客様との関係づくりにおいて意識していることについても教えてください。

 

小澤――お問い合わせやご相談、ご紹介があれば、必ずその日のうちにご連絡するようにしています。銀行担当者への進捗確認などもそうですが、やはりスピード感を大切にしています。お客様にお時間があれば、その場で現状をヒアリングさせていただきます。不安なことや不明点、懸念点、心情など傾聴から始まり、信頼関係を築いていくように意識しています。

 

ご依頼をいただいた後は、なるべく融資実行が速いように進捗管理を工夫しています。毎日すべての案件の進捗を確認することが、私にとってのルーチンです。このルーチンが、スピーディーな融資実行のために重要であると思います。スピード感のある対応をすることで、お客様との信頼関係が築かれ、本音で話していただける関係になれると思います。

 

また、資料作成に関しては、ストーリーを重視しています。過去、現在、未来で会社を語れるような資料をつくり、お客様にも過不足がないかご確認いただきます。なぜ資金が必要なのか、いつ必要なのか、いくら必要なのかを明確にしていくことも、融資審査を通すためにはとても重要です。資料作成のプロセスでも、お客様との信頼関係を深めることができます。

銀行・金融機関は「なぜ貸さなかったのか」理由を教えてくれない

井上――小澤さんは長年地銀にお勤めでしたが、銀行・金融機関は決算書のどんなところを丹念に見ているのでしょうか。

 

小澤――勘定科目内訳書、売掛金、借入先などをよく見ています。勘定科目内訳書では、どんな先に商品やサービスを販売しているのか。売上の根拠になる部分ですから、重視しています。売掛金のなかに不良債権がないかも見ています。2年連続で同じ金額が載ってる と、貸し倒れを想像します。借入先は、どんな金融機関から借り入れているか、短期借入金や長期借入金、役員借入金・役員貸付金なども見ています。

 

含み損についても決算書から読み取っています。例えば、不動産やゴルフ会員権は簿価と実際価格で差がありますから、実体がわかるように作り直すこともあります。

 

作り直すと債務超過になるケースもありますが、なぜ貸せなかったのか、銀行・金融機関はわざわざ教えてくれません。私は貸す側の視点を知っていますから、もちろん仮説ではありますが、お客様にその理由をお伝えすることもできます。

 

一方では、地方の優良企業には銀行・金融機関も本音を言えないことがよくあります。歴代の支店長も気を遣っていることがあるのです。そんなときに通訳になって意思の疎通を図ることも、私の役割であると考えています。

 

井上――それは重要な役割ですね。友人の銀行員から以前、「だれが作った決算書かを注意して見ている。会計事務所は、都合よく決算書を誤魔化すことがある。会計事務所は銀行の敵である」とプライベートな場で言われたことがあります。不正は絶対にダメで、嘘をつかず事実を書くべきです。一度の不正で取引できなくなるのはあってはならないことで、銀行・金融機関と会計事務所の健全な連携を強化したいと私たちは考えています。

 

小澤――ハイブリッド資金調達で、各銀行・金融機関とそんな強固な連携を築いていきたいです。

今後のビジョン

井上――では本稿の最後に、今後のビジョンについても明確にしておきたいと思います。日本はオーバーバンキング(銀行・金融機関の数が多すぎる)と言われており、今後は銀行・金融機関の数は合併や資本提携によって減っていくでしょう。ネットバンキングが増え、支店の数も減っていくことが予測されます。そんな銀行・金融機関側の背景を、小澤さんはどう捉えていますか?

 

小澤――オーバーバンキング是正の目的は、適度な競争を起こすことであると考えています。競争を起こし、お客様の利便性向上とコストの最適化を図り、お客様により高い付加価値をご提供する方向に進むでしょう。そのことで、経済の活性化、中小企業・スタートアップ企業の創出や成長につながることが理想だと思います。

 

資金調達の手段は、まだまだ間接金融が中心で、この状況は当面続くと考えています。今のうちから、銀行・金融機関と良い信頼関係を築くことが重要です。1行だけとしか取引がないと、相談先の選択肢が狭まってしまいます。合併や資本提携が続くと、金利の競争原理が下がってしまうため、戦略的に融資条件の競争を起こして、より良い条件で借りられるように工夫することも重要です。借入金利が下がるように、期間を長くしたりまとめたりしていきます。保証協会付けではなくプロパー融資にしていく。信用金庫だけでなく、地銀や第二地銀、メガバンクへと広げていく。銀行・金融機関の信用格付けが上がるように、良い決算書をつくる。そんな継続的なご支援をすることが、私たちの役割だと思います。

 

井上――私たちは財務経営コーチングで継続的かつ本質的な経営支援を行っていますから、資金調達というスポットでは終わらず、企業の成長やLTV(ライフ・タイム・バリュー)に合わせた総合的な支援が可能です。

 

私たちグループ自身でも、借入一覧表を作成し、借入を一本にまとめて返済期間を長くすることで月々の返済負担を減らすことに成功しました。月々180万円も減らすことができたのです。融資審査を通すだけではなく、もっと良い金利で資金調達ができるようにしていく。適切な競争を起こす。戦略的な借入を実行する。より良い条件を引き出せるように交渉する。長期的、未来的、立体的な資金調達支援を行い、お客様が本業に力を注げる環境をつくることも、私たちの役割だと思うのです。

 

小澤――そのとおりだと思います。同じ会社様から資金調達のご相談をいただくことは何度もあります。困ったときにまずご連絡をもらえる関係性を築いていくことはもちろんですが、財務経営コーチングで行っている「9ヶ月目仮決算対策®」で借入一覧表を定期的に見直すことも重要であると思います。この借入一覧表の見直しサイクルを、会社経営のスタンダードにしていくことが私たちのミッションなのだと思います。

 

井上――ぜひ、私たちの手でスタンダードにしていきましょう。今後さらに、銀行・金融機関から多くの人財が流出することが予測されます。優秀な人財から辞めていくのでしょうから、ハイブリッド資金調達を担当できる後進の育成も意識していきたいと思います。

 

また、私たちだけでなく他の会計事務所とのアライアンスでハイブリッド資金調達の手法を広め、ハイブリッド資金調達を資金調達のスタンダードにしていきたいと思います。私たちは、シェアオフィスのWeWork丸の内北口に東京オフィスを置いています。ここに地方の会計事務所の東京支店を置くことを促し、アライアンスを強化していきます。その際、国税出身税理士のシンクタンクである一般社団法人さくら税務実務研究所をハブにして、複雑な税務判断にも対応できるようにしていきます。