地域企業社長の傾聴役となって徹底的に伴走支援する(新田信行特別顧問×井上一生対談①)

地域企業社長の傾聴役となって徹底的に伴走支援する(新田信行特別顧問×井上一生対談①)

弊グループでは、地域企業と社長ご一族を、資金調達・財務支援、組織・人事労務支援、IT・DX推進支援、M&A・相続・事業再生支援といった多角的なアプローチでご支援しています。日本全国の地域企業の持続性を高め、日本復興を実現するためには、地域金融機関との連携強化が欠かせないと私は考えています。そこで今回は、SAKURA United Solutionの特別顧問をお願いしている新田信行氏と対談を行いました。地域の金融機関と地域の士業事務所は、地域企業に対してどのような支援ができるのか。その可能性をお伺いしています。

 

【新田 信行(にった のぶゆき)特別顧問 プロフィール】

1956年生まれ、千葉県出身。1981年に第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。

みずほフィナンシャルグループ与信企画部長を経て、2011年にみずほ銀行常務執行役員。

2013年から2020年まで第一勧業信用組合理事長、会長。開智国際大学客員教授。

地域金融機関の有志が集まる「ちいきん会」代表理事。

 

小学生の頃から持ち続けている「地域企業支援への想い」

井上一生(以下、井上):父が生コン事業をしていて、私が小学校低学年の頃から、月末になると「手形が落ちる落ちない」で夫婦ケンカする両親の姿を見て育ちました。日々資金繰りに走る中小企業社長の息子だったのです。そこに、私が税理士になったきっかけがあります。手形というよくわからないもの。その謎を解くために会計を学んだのです。

 

大学を出て、当時世界最大の会計事務所だったアーサーアンダーセンに勤務しました。その後、1988年9月に独立して、毎日必死に仕事をして気づいたら30年以上が経ち、改めて今想うことがあります。

 

それは、「一般的な会計事務所がする過去処理だけでは、社長の本当の支援はできない」ということです。自分の原点に立ち戻ると、毎日必死になって仕事をして家族や社員の雇用を守っている、地域経済を支えている中小企業社長とその家族のために仕事がしたいという想いがありました。

 

しかし、社長は毎日がとにかく忙しくて、会計や金融のことを勉強する時間がない。それなら、私たちが代わりとなれば良い。私たちはあくまでも黒子で、社長が主役です。社長ができないことを代わりにやる。そういう役割分担で良いと思うのです。

 

多くの会計事務所は、決算書作成や税務申告だけをしていて、十分な経営支援ができていません。それで私は、資金調達・財務支援、組織・人事労務支援、IT・DX推進支援、M&A・相続・事業再生支援と、支援領域を広げてきました。各領域に精通した専門家を社内外で集め、ユナイテッドで対応しています。私たちは、地域企業を元気にすることが地域創生であり日本再興になると信じています。これが私の使命であり、残りの人生をかけることです。

 

長くなってしまいましたが、そんな前提を踏まえ、今日は弊グループの特別顧問の新田さんにお話を伺えればと思います。新田さんは金融の深い世界をご存知ですが、コロナ禍のゼロゼロ融資などを経て、現在をどのように見ていらっしゃいますか?

 

新田信行特別顧問(以下、新田顧問):「ゼロゼロ融資の借り換え」の話題が挙がるようになった2022年当時、「コロナ禍の緊急対応は、本来すべき審査を先送りしただけで、これからが本番」と私は言っていました。「最新の実態バランスシートの確認」と「今後の資金繰り見通しの作成」が急務であったと思います。

 

また、「過去の決算書を見ても事業性評価はできない。今見える“実”や“葉”ではなく、“根”を見る。『来年、実がなるのかどうか』を知るためには、根っこを見ないとわからない。過去の連続性だけでは、事業性評価はできない」とも言っていました。根っこを見るためには、デスクに座って決算書を見ているだけではダメでしょう。

 

事業内容やその会社の製品、サービスを理解するために現場を見に行き、膝を割って話ができる関係性。そして、困ったときに相談に乗ってくれるキャディー的な存在が、社長の皆様には欠かせないと思います。

社長と本気で面と向かい合えるか?

井上:そんなキャディー的な存在に、私たちがなれればと思います。新田さんは、私たちのような士業をベースとする専門家たちは、どのような金融機関と連携するのが地域経済にとって良い効果をもたらすと感じますか?

 

新田顧問:私は、金融機関をひと括りにはできないと思っています。高級フレンチから町のラーメン店までを一緒には語れないのと同じです。金融機関も多様で、一行一行違うのです。

 

まず前提として、金融機関は黒子です。経営支援専門家も黒子。主役は地域企業と社長です。一言に金融と言っても、世界で展開しているような大企業のための金融と、地域企業のための金融では異なります。「真面目に国内の地域企業を支援しようとしている金融機関と一緒に、どうやって主役である社長を支えるか?」それを真剣に議論できる金融機関と組むのが良いのではないでしょうか。

 

社長と本気で面と向かい合えるか?

 

組むべき相手は、その一言に尽きます。士業もコンサルタントも玉石混交です。同じ志を持つ者同士で支援することが大切でしょう。新しい芽をつくっていく時代が今ですから、種まきを怠ってはいけないと思います。

セールス禁止の傾聴

井上:新田さんは、地域企業の社長と金融機関との関係は、どのように変化したと思いますか?

 

新田顧問:私が銀行に入った頃は、社長の話し相手になれるバンカーが多かったと思います。社長が銀行員に対して本音を話せるような関係を築いていました。親子問題や家庭問題も話せるような信頼関係です。

 

社長の話を聞くときは、セールス禁止。社長の夢や悩みを聞いて、適切なアドバイスをすることがバンカーの仕事でした。ただ、時代は変わり、社長の話し相手になれるバンカーが減ったと感じます。

 

私の場合、社長と1対1で飲むことが多かったです。そうすると、社長は本音を話してくれます。「うちの息子に社長が務まると思うか?」とか、そういう本音の話は1対1でないと難しいわけです。私は社長と話すとき、社長を元気づけることを心がけていました。悪いところを指摘して社長が元気をなくしたら、会社がダメになるからです。

 

バンカーは、社長のキャディーでありバディーです。前段が崩れるからカネがおかしくなる。社長が自分を失うと、ヒトやモノ、カネを失うんです。本当に悩んだときは、目先のハウツーじゃない。もっと本質的・根本的なことを知りたいと思うのが人間です。

 

井上:新田さんは、ご自身でも地域企業の社長と同じような経験をされたことがあるのですね。

 

新田:はい、あります。私は第一勧業信用組合のときに、だれも相談相手がいなかったことがありました。追い込まれるところまで追い込まれたのです。あのときは、自問自答するしかなかった。そのとき、初めて地域企業社長の気持ちがわかった気がします。サラリーマン社長では、絶対にわからないことです。

 

振り返ると、「あのときこうしていたら」ということが今でもあります。相手の気持ちになる力がついたと思います。そんな経験もあって、自分の人生を懸けて泥にまみれて必死になっている社長を支援したいと思うようになりました。そのあたりは、井上さんと同じ志ですね。

 

 

井上:ありがとうございます。対談②では、新田さんが代表理事を務めるちいきん会の活動や対話の重要性、具体的な経営支援まで踏み込んだお話をしようと思います。続きも宜しくお願い致します。