ベンチャーとは創業年数ではなく経営者の姿勢

「ベンチャー」には、冒険や冒険的な企てという意味があります。経営者や起業家は、いつまでもちょっとおバカで、面白いことや新しいことにチャレンジする姿勢を持っていないといけないでしょう。現状に甘んじることなく、常に変化し、適応する。そうでなくては、長く会社を続けることはできないのではないでしょうか。

 

※本稿は、SAKURA United SolutionのYouTubeチャンネル内に開設した、iU学生起業家の茂木大暉氏(GADGETANKER LLC CEO)の経営相談に応える新コーナーより一部抜粋、編集したものです。

 

※iU(iU情報経営イノベーション専門職大学):2020年に設置され、東京都墨田区文花に本部を置く日本の私立専門職大学。産業界と連携した新しい学び、イノベーションを起こす人材を育成している。井上一生は、iUの客員教授を務めている。

 

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創業5年以内がベンチャーなのではない

「経営するときに、どんな意識で仕事されているのか?」というご質問を、学生起業家の茂木さんからいただきました。

 

私は、「成長したい。やるからには、成長したいよね」とお答えしました。独立してから30年以上が経ちましたが、今でも「うちはベンチャーです」と言っています。ベンチャーを「創業5年以内」と定義することもありますが、そうじゃない。経営者の姿勢こそがベンチャーです。現状に満足することなく、チャレンジし続けるということです。

 

これまで、たくさんのビジネス構想を掲げ、行動に移してきました。なかには軌道に乗ったビジネスもありますが、やはり失敗や頓挫したものも多いわけです。だから、「なんか井上さんのやり方っておかしいよ」という人も当然います。「好きなことをどんどんやるんじゃなく、落ち着いて一つのことに集中すれば良いじゃないか」という人もいます。しかし、戦い方って経営者それぞれだと思うのです。

「経営は究極の趣味」と言えたら幸せ

経営って、ある意味では究極の趣味です。これは苦労ではなく、一番愉しいものです。自分の好きなことをやっているんだから。

 

趣味はと聞かれると、ヨットと答えたり空手と答えたり、尺八と答えたりします。ですが、一番の趣味は経営なのです。そのぐらいに思えていたら良いじゃないですか。法に触れないこと、人を傷つけないこと、倫理に反すること以外は、好き勝手なことをやっても良いわけです。一回しかない人生だから。

 

ただし、会社を潰してはいけません。なぜ潰しちゃいけないか。それは、社員とその家族がいるからです。社員が200人いるとすれば、その彼氏彼女や配偶者・パートナー、子どもたちがいれば、400人や500人の生活や人生がかかっているわけですから。

アイデアを素早く実行して試しながら考える

好き勝手をやっても良いと言っても、思い付きでなんでもかんでもチャレンジすれば良いということではありません。ヒトモノカネという経営資源は無限ではありませんし、時間も無限ではありません。だから、経営者は考える時間を確保する必要があります。

 

周囲の人からすると、「また思い付きで新しいことをはじめて…」と思われるかもしれません。しかし、一晩中・四六時中そのビジネスのことを考えて、いろいろな人の意見や話を聞いて、何度もシミュレーションして、それから発言していることもある。周囲の人は急に言い出したと捉えるかもしれませんが、実際はそうでないこともあるのです。

 

しかし一方で、低額の投資でスモールスタートできるのであれば、アイデアを素早く実行して、試しながら考えるという選択もあります。「走りながら考える」というのは、リクルート社の有名な言葉にもあります。

 

例えば、キッチンカービジネスのアイデアがあります。

 

今、大学で教壇に立ったり、インターンシップの学生さんたちを集めたりと、学生世代の人たちとの交流をしています。学生のうちに起業するのもとても良い経験になりますが、起業前に疑似体験できるインターンシップがあればもっと良いなと感じました。それで、キッチンカービジネスをできないかと。

 

飲食業は、仕入れや調理、集客、接客、社員やアルバイトの採用、教育、会計、資金調達…など、さまざまな業務が必要で、まさに総合芸術です。そんな飲食業経営の疑似経験を、キッチンカーでしてもらおうと思っています。

 

キッチンカーで飲食業を体験し、学んで、一方では経営のビジネスゲームを徹底的にやる。ビジネスゲーム・シミュレーションゲームをやって、キッチンカーでゲームから得た学びを試す。そんなサイクルを経験できたら、インターンシップを経験した学生さんのその後の人生の糧になるのではないでしょうか。もちろん、そのままキッチンカービジネスで起業したって良いのです。しかも、キッチンカーは与えられたり買うのではなく、組み立てから始まるんです。30万円くらいの中古の軽トラックを買ってきて、アルミパネルを丸のこで切って、自分たちで組み立てて、厨房機材は街道沿いの廃業したお店のパーツを売っているところがあるから、そこに買いに行って、自分たちでメニューを決めて、チラシをつくって、キッチンもつくって、それでみんなで売りに行く。全部DIYです。食材を仕入れて、調理して、一日売って、一日の決算書をつくる。決算書のつくり方を教えてもらって、経験できるインターシップは、ほかにないと思います。

 

こんな風に、アイデアを出し合ったり、意見交換したり、学生さんや普段あまり関わらないような世代、業界の人たちとも交流して、構想・計画を固めていく。結局スタートしないこともありますが、それはそれで検討の結果なのです。知る⇒判断⇒実行というビジネス反射神経を磨くことも、ベンチャーには欠かせません。