AI時代だからこそ求められるリベラルアーツとマーシャルアーツ

前回のブログ、『クレジットカード&マイルを活用した経営と旅』に続き、イタリア滞在中に考えたことや感じたことを綴りたいと思います。今回は、リベラルアーツとマーシャルアーツについてです。昨年2023年は、ChatGPTの登場により「生成AI元年」と言われるほどAIに注目が集まった年でした。AIを使うことが当たり前になる時代に、私たちはどんな知恵やスキルを身につけるべきなのでしょうか。

 

写真:イタリア滞在中に鑑賞した小さな教会でのオペラ

VUCA時代に求められるリベラルアーツ

イタリアに来てさまざまなものを見聞きし、全人的なバランスのある社会のリーダーになるためには、芸術、音楽、宗教、哲学、倫理、歴史を自身の背骨にしなければならないと痛感しました。

 

現代は、変動の多い不確実な時代です。VUCA時代とも呼ばれており、VUCAは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の4つの単語の頭文字を取ったものです。新型コロナウィルスのパンデミックや生成AIの進化など、社会の変化を予測しづらい状況を指しています。

 

このような時代に、人にしかできないことを探究・追求する。全人的なリベラルアーツは、ぜひ必要な要素です。リベラルアーツは、「自由学芸」「教養諸学」「実用的な目的から離れた純粋な教養」「一般教養」とも言われます。または、人文学・芸術・自然科学・社会科学などの分野の基礎知識を横断的に修得することもリベラルアーツと呼ばれるようです。

 

欧米人の個人の名前を考えてみましょう。彼ら彼女らの名前は、キリスト教の聖人か神の名に由来しています。イスラム教の世界でも同様です。友人のヒンズー教徒の行動、価値観は、信仰に根付いています。ある国では、初対面の挨拶で宗教を確認することがあります。宗教ごとに決まり事があり、相手の宗教・文化を尊重するためです。相手を知るために、信仰する宗教を確認するのです。そのくらいに、宗教は人の心、生活、政治、経済、人生に根付いています。命を賭けた軍事紛争を見てもわかります。

 

イタリアのテレビを見ると、絵画をはじめとする芸術の番組、テレビ通販の多いこと。驚きです。宗教、表れとして宗教芸術を軽視する日本人、東洋人は、得体の知れぬ背骨のない無脊椎動物に見えると思います。京都や奈良、東京。宗教的観光資源の体験的な信仰側面を、今一度重視すべきなのではないでしょうか。例えば、坐禅を体験させるとか。書を書かせるとか。日本は、宗教信徒を異端蔑視する風潮があります。哲学と宗教は、表裏です。信仰に対する軽視は、何かと不自由な年齢になったとき、重いしっぺ返しが来るでしょう。信仰は心のバランス、健康のためにあります。

マーシャルアーツで「道」を追求する

リベラルアーツともう一つは、肉体的側面です。何かと不自由な年齢に(私は、膝痛とか来てます)立ち向かう心と身体の有り様。こちらをリベラルアーツに対して、「マーシャルアーツ」と位置付けたい。マーシャルアーツ(martial arts)は、日本語の「武芸」を英訳した言葉です。文字どおり、「武の(martial)」と「芸(arts)」のことを指しています。これが転じて、レスリングやボクシングといった西洋文化に根を持つ術技体系以外の拳法、格闘技、つまり東洋の武術全般を指す言葉です。

 

筋肉体操では、生涯は続きません。「道」がないからです。私個人の体験的には、生涯やるなら空手道は良いなと感じてますが。柔道でも剣道でも、弓道でも茶道でも、自分に合うもので良いと思います。ひたすら、無心に行じること。禅の世界に近い。無の境地です。これは身体のバランス、健康のためにあります。何事も最後の勝負は、体力、健康、気力(やる気、根気、色気、好奇心)です。

 

「芸」「道」=「倫」「学」「知」「行」

 

学ぶことが楽しい。知ること、理解することが楽しいのがリベラルアーツ。そして、無心に行じることができる「道」、マーシャルアーツ。その両方が必要で、AI時代に、人間にしかできない総合教養が大切な時代に入ったと感じています。

VUCAな現代と古代ギリシャの共通点

子育て世代の方々は、「STEAM教育」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。STEAMは、「科学(Science)」「技術(Technology)」「工学(Engineering)」「芸術・リベラルアーツ(Arts)」「数学(Mathematics)」の5つの頭文字を組み合わせた造語です。この5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念をSTEAM教育と呼んでいます。知る(探究)とつくる(創造)のサイクルを生み出す、分野横断的な学びです。

 

このSTEAM教育の中にも、リベラルアーツが含まれています。現代でリベラルアーツが推奨されている理由には、以下のようなことが考えられます。

 

①VUCAの時代は、変化が激しく、不確実で、複雑で、曖昧な状況に直面することが多い。そのような状況に対応するためには、専門的な知識や技能だけではなく、多角的な視点や柔軟な思考、創造力や問題解決力などが必要です。リベラルアーツは、哲学や歴史、文学、芸術など、さまざまな分野の知識や思想を学ぶことで、これらの能力を育むことができます。

 

②リベラルアーツは、自身や自分の専門分野を相対化し、批判的に見ることができるようになります。これによって、自分の価値観や思い込みに捉われず、他者の視点や意見を受け入れることができる。また、自分の立場や方向性を明確にすることができる。これらは、多様な人や文化と協働することが求められるグローバル社会において、重要なスキルです。

 

 

歴史を振り返ってみると、古代ギリシャの時代(紀元前8世紀~紀元前4世紀にかけての古典期)にもリベラルアーツが推奨されていました。この時代には、ギリシャの都市国家が発展し、ペルシャ帝国と戦ったり、哲学や芸術、文学などの文化が栄えました。

 

リベラルアーツという言葉は、ラテン語で「自由な人々の芸術」を意味します。古代ギリシャでは、奴隷や労働者ではなく、自由な市民として生きるために必要な教育として、リベラルアーツが位置づけられていました。リベラルアーツは、当時の政治や社会に関わることができる知識や能力を身に付けることを目的としていたようです。

 

現代と古代ギリシャには、共通点があります。両時代とも、自由で民主的な社会を目指しているという点です。リベラルアーツは、自分自身や社会を理解し、自由に考え、行動する人間を育むことで、そのような社会の実現に貢献することができます。また、両時代とも、科学や技術の発展によって新しい知識や価値が生まれているという共通点もあります。リベラルアーツは、科学や技術と対話し、その影響や意義を探求することで、イノベーションを促進することができるでしょう。

 

VUCA時代、AI時代には、リベラルアーツとマーシャルアーツを学び、身につけると良い武器になると感じます。世代を問わず、学びは一生ですね。