イタリアにみる日本の目指す道

前回のブログ、『サイゼリヤ創業者・正垣泰彦さんから学び実行した「経営の原理原則」』に続き、イタリア滞在中に考えたことを綴りたいと思います。イタリアにみる、日本の目指す道。「ヨーロッパのイタリア、アジアの日本」のような独自のブランド。私は滞在中に、イタリアから学び、活かせることがたくさんあるのではないかと感じました。このブログが、会社経営やなにかのヒントになれば嬉しい限りです。

 

 

日本はイタリアをお手本にできないか?

イタリアは、同じヨーロッパのドイツにもフランスにもイギリスにも、ある意味では遅れをとっているのかもしれません。イタリアの街中では、自動車はエコノミーカーくらいしか見かけませんでした。フェラーリもマセラティも、アルファ・ロメオも、日本での方が多く見ることができるかもしれないと思うほどです。

 

韓国の車も日本の車も、大量にイタリアという国の自動車、移動手段として活用されています。しかし、フェラーリはイタリアのイメージリーダーであり、この国の強い味付けのスパイスになっていると感じます。

 

また、フィレンツェは、世界のファッションの動向・トレンドを決める「世界のファッション中心地」となっています。来年のファッションのトレンドは、フィレンツェで発表されるのです。パリではありません。ハイブランドのフェラガモも、 グッチも、フィレンツェが本店です。

 

経済力ではヨーロッパの他の国に遅れをとっていても、独自のブランドや影響力がある。これは、日本の未来のヒントなのではないかと思います。

 

ジャパン・アズ・ナンバーワンの幻想を捨てよう

WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)の調査によると、2022年のイタリアGDP中、観光業が占める割合は10.2%。イタリアのGDPの10%は、観光で稼いでいるというわけです。日本は今、観光立国を目指そうとしています。世界中の人々が、生涯で一度は訪れたいと思う国や街。「ナポリを見てから死ね ~ Vedi a Napoli e mori ~」という言葉があるように、日本各地には、美しい街並みや歴史、文化がありますから、イタリアに負けない魅力に溢れていると思います。

 

観光に食は欠かせない要素ですが、日本は、もう一度独自の農業を産業化すると良いのではないでしょうか。決して大量生産ではない、差別化できる農作物です。日本ほど繊細なイチゴや梨を開発できる民族はいないでしょう。農産品をコンテンツにし、観光との相乗効果をはかるのです。

 

ジャパン・アズ・ナンバーワンという幻影を捨てて、日本はアジアの中でイタリアを目指すのが良いのではないかと、滞在中に感じました。急速な人口減少の中で、アジアの盟主は日本ではありません。近い未来に、GDPはインドネシアやベトナムにも抜かれるでしょう。国民一人当たりの所得に関しては、すでに韓国や台湾に抜かれています。そういった国々と連携をとって、パートナーシップで生きていきましょう。ヨーロッパのイタリア、アジアの日本。ジャパン・アズ・ナンバーワンではなく、ジャパン・アズ・オンリーワン。そんな独自のブランドや影響力を、日本も築いていけると思います。

 

モノを買っているのではなく物語や歴史を買っている

観光立国で欠かせない、コンテンツと歴史。サービスとおもてなし。多様な食文化。風光明媚な国土…、これらの1等国に日本はなれるでしょう。特におもてなしに関しては、日本はダントツの差別化ができると感じます。私がイタリアで泊まった、5つ星と言われるホテルでも2回、ホテルサービスの基本とも言えるベッドメイクを忘れるという大ポカをしています。人手不足なのでしょう、ベッドメイク担当は外国人労働者です。

 

コンテンツや歴史、そしてそれらの見せ方や売り方についても、イタリアから学べることがあります。13世紀からある、現存する最古の薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局」を訪れました。フランスの王様に嫁ぐメディチ家のカトリーヌ・ド・メディシス王妃に、香水をデザインして持たせたそうです。イタリアの文化を、香水とともにフランスに届けた歴史。その香水は、今も販売されています。日本でも、京都のような歴史ある街が各地にあります。そして、100年企業が世界一多い国は日本です。サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局で香水を買っている観光客は、香水を買っているのではなく、物語や歴史を買っているのではないでしょうか。ここに、見せ方や売り方のヒントがあると思います。

 

イタリアを訪れる外国人旅行客の多くの割合は、アメリカ人が占めるようです。歴史の浅いアメリカの人は、深い歴史を持つイタリアに憧れているのだと言います。重たい国家負債も、人々の高齢化も、イタリアと日本は似ています。しかし、イタリアの街にいる人々は活気に満ちて幸せそうに生きています。一方で、日本の人々はどうでしょうか?

 

日本を悲観論で語るのは、もうやめよう

高齢化しつつあるこの地球上で、「GDP」や「一人当たりGDP」という指標だけで経済力や国力を語るのは、もうあまり意味がないのではないかと感じます。特に高齢化が進んでいる先進国や東アジア圏では、「生産年齢人口当たりGDP」と併用するのが良いのではないでしょうか。この指標で見ると、日本はG7の中で優等生。失われた30年と呼ばれた期間だけを取っても、平均以上です。

 

GDPや一人当たりGDPの数字だけを見て、日本を悲観論で語るのはもうやめましょう。未来の子どもたちに対して、負の印象を植え付けるだけです。それほど、日本は没落していません。30年前より、東京や大阪の街はきれいに整備され、犯罪発生率は低下し、平均寿命は世界トップレベルを維持しています。世界に先駆けて、厳しい少子高齢化に見舞われても、社会が豊かさを保っているという事実。日本は、今後少子高齢化を迎える国々にとって素晴らしいモデルケースになり得るのではないでしょうか。日本の未来は、希望で溢れている。そんなメッセージを、若い世代や子どもたちに残していきたいですね。