DIYによるオフィス内装工事はチームビルディングの機会

iU学生起業家の茂木さんは、この対談を収録した頃にオフィスを構えました。ちょうど、スケルトン状態からみんなで内装工事をするところでした。私も、社員と一緒になってペンキ塗りをしたことがあります。ただの内装づくりで終わらせるのではなく、チームビルディングに変える。今回は、そんなアドバイスをさせていただきました。このようなアドバイスもする税理士は、きっと世界で私だけです。

 

※本稿は、SAKURA United SolutionのYouTubeチャンネル内に開設した、iU学生起業家の茂木大暉氏(GADGETANKER LLC CEO)の経営相談に応える新コーナーより一部抜粋、編集したものです。

 

※iU(iU情報経営イノベーション専門職大学):2020年に設置され、東京都墨田区文花に本部を置く日本の私立専門職大学。産業界と連携した新しい学び、イノベーションを起こす人材を育成している。井上一生は、iUの客員教授を務めている。

 

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DIYによるオフィス内装工事はチームビルディングの機会

最初から家賃の高いオフィスを借りることは、スタートアップベンチャー企業にとっては難しいことですし、固定費を上げることになってしまい、経営的にも高リスクです。

 

おのずと、内装は居抜きや又貸し、居候のケースもあるでしょう。基本的には苦労して積み上げ手に入れた資金に関しては、なるべく使わないようにすることが得策です。お金が結構あったと思っても、気前よくお金を使ってると通帳残高が見る見る間に減ってしまって、不安になります。使わないなら使わないで、「これが私たちのローコスト、オペレーションのあり方だ。スティーブ・ジョブズだって、最初はガレージで始めたんだよ」ぐらいにうそぶいておけば良いんです。

 

私たちもメインのオフィスは埼玉の武蔵浦和にあって、閉店してしまったスーパーの跡地をそのままオフィス用に改装したものです。と言いながら一方で、丸の内のWeWorkにお客様とお会いするためのオフィスが用意されてます。お金をかけるところに一点豪華主義にすれば良いのですよね。経営トップの価値観やワークスタイルに合わせれば良いと思います。なるべくお金を使わない投資をしていただいた方々に、気を遣う大事なところだけに集中投資をする。例えば、ボロボロでスケルトン状態のオフィスを借りることになるでしょう。壁や天井、床をどう仕上げて、お客様がお越しになっても恥ずかしくない状態にするか。また、社員のみなさんが少しでも快適に仕事に取り組める環境にするか。予算があれば良いのですが、少しでも安く抑えたいのが堅実な経営者の務めだと思うのです。

 

まずは、ニトリで一番安いカーペットを買ってきます。それを床に敷き詰めると安上がりです。倉庫を改装したニューヨークのブティックの床もそうでした。壁紙は貼らず、刷毛ムラが付くローラーを買ってペンキを塗ってください。ムラが良い風合いになります。パーテーションは、垂木とシナベニアでつくり、ペンキを塗ると良いです。

 

利益が出たら、経費でオフィス環境を徐々に整えていけば良いと思います。いきなりカッコいいオフィスにはならなくても、社員みんなでやると愛着も湧きますし、チームビルディングにもなります。

チームビルディングとは

チームビルディングは、組織力を高め、社内コミュニケーションを活性化させる取り組みです。会社のビジョンやミッション、そこで働く自分の役割を知り旗落ちさせることで、みんなのモチベーションが高まり、個々の能力を伸ばすことやエンゲージメントを高める効果も期待できます。

 

チームビルディングには、

 

・プロジェクトチームのメンバーを集めた研修

・中長期の組織づくりのプログラム

・ワークショップ

・ビジネスゲーム

 

などが挙げられます。広義では、日々のコミュニケーションや朝礼、社内会議もチームビルディングに含まれるでしょう。

 

チームビルディングを行うメリットとしては、

 

  1. 協力体制をつくり、パフォーマンスを向上させる
  2. コミュニケーション不足の解消とチームの連携強化
  3. ビジョンやミッション、パーパスの浸透

 

などがあります。

 

例えば、オフィスのペンキ塗りをチームに分けて競争してもらい、仕上がりやスピードで勝敗を決めるゲームにしても良いでしょう。勝ったら、お酒や食事でもご馳走しましょう。絵心のある社員がいれば、壁にちょっとしたアートを描いてもらうと、それもまたオフィスへの愛着を持たせてくれます。

スタートアップベンチャーは海外企業もDIY

私は、コロナになる前にエストニアのタリンに視察に行ったことがあります。エストニアは世界的に有名なスカイプを生み出した国で、スカイプで成功して得た資金でベンチャー投資をしている「スカイプマフィア」と呼ばれる投資家たちが活躍しています。

 

エストニアのスタートアップエコシステムの隆盛は、このスカイプによるところが大きく、ロールモデルになっています。成功した起業家がシリアルアントレプレナー、投資家、インキュベーターになって後続のスタートアップベンチャー企業を支える、という流れができています。

 

そんなスカイプ本社のすぐ近くには、タリン工科大学(日本では会津大学と提携)があります。そこには、学生と企業向けのコーワーキングスペース兼インキュベーター施設である「MEKTORY(Modern Estonian Knowledge Transfer Organization For You)」があります。MEKTORYには、ミーティングルームやラボ、オフィスなど完備されており、コンペやインキュベーションなどが頻繁に行われています。

 

このコーワーキングスペースでは、ビジョン・ミッションが壁に手書きで描かれていました。きれいな仕上がりではない、DIY的なものでしたが、起業家たちはその壁に描かれた言葉を忘れることはないでしょうし、そのコーワーキングスペースを忘れることもないでしょう。

 

実はこのスペースは、元ソ連の軍事工場だったそうです。別のところには、閉鎖した火力発電所をそのまま丸ごとシェアオフィスにしているところもありました。

 

どんな大企業も、最初は小さな一室のオフィスや小さな店舗から始まります。そこから、会社という物語が生まれる。そんな未来を想像しながらオフィスづくりに取り組む経験も、振り返ってみれば貴重な経験だと思います。