『シラス漁師とマグロ漁師』の逸話

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これは、ある有名なビジネスの例え話。

シラス漁師とマグロ漁師の会話です。

 

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マグロ漁師:おいおい、シラス漁師くん。

      マグロ漁を教えるから、マグロのエサのイワシを獲って来てくれよ。

 

シラス漁師:ダメだよ。シラス漁が忙しくてさ。

 

マグロ漁師:おいおい。段々シラスは獲れなくなってきたし、値段も安くて貧しいままで、

      船の借金もとんでもないことになっているんだろ?

      マグロの釣り方を教えてくれって、

      君が言うから、君がシラス漁を辞めるの待っているのに。

 

シラス漁師:わかってるよ。でも、今はシラスが獲れるんだから、シラスを獲らせてよ。

 

マグロ漁師:毎年同じことを言ってないか? そのまま人生終わるよ。

 

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独立するとき、どのような戦略で自分のビジネスを組み立てていくのか。

それを考えなければなりません。

もちろん、ブルーオーシャンのマーケットでしたら、

マーケットに旬で一番尖ったものを一番利益が出る値付けをして売れば良いのですが、

ほとんどのマーケットに業界の先輩・ライバルがたくさん存在するわけです。

 

そんなときに、冷静に戦略を考えるためには、

今後5年先、10年先、自分が生きようとするマーケットをじっくりと観察してみることが重要です。

そのマーケットは、5年後にはなくなってしまうかもしれません。

今扱っている商品は、1年後にはブームが去っているかもしれません。

 

 

 

私の仕事である会計事務所の事例で言えば、もう20年以上前の話ですが、

大きな事務所と小さな事務所が二極化している、札幌という地域に注目しました。

 

20年前の当時、同業の若手だった仲間と大きな事務所に連絡して、よく見学をさせていただきました。

北海道は、明治時代になって開拓された地域であり、

そこに移り住む人は新しいものを受け入れる柔軟性がある人々で、

未来を具現化している場所だという仮説を立てたからです。

 

そこで大変参考になる話を、

当時北海道で一番大きいと言われた、池脇先生の会計事務所で伺いました。

時間が経っていますので、私の不確かな記憶の話で事実と間違っているかもしれませんがご了承ください。

 

 

池脇先生の話では、池脇先生も開業当初は、業界の新参者でしたし、資金も人材もない。

会計システムの処理代金もバカにならない。小さな会計事務所だったそうです。

処理を依頼する計算センターで、会計処理が一番安い飲食業にターゲットに当てて、

札幌の飲食街を飲み歩きながら値段設定もそれなりに安くして、

しらみつぶしに飲食店へ営業していったそうです。

 

お金はないし、優秀な人材もいない。

そこで経営基盤を築き、経営規模が大きくなった後は、

システム開発や規模の大きいお客様を狙うことにシフトしていった。ということなのです。

 

優秀だけど小さな会計事務所の先生が、勝負に出て借金をして優秀な人材をスカウトする。

それでサービスレベルを上げて、お客様の単価を上げようとする。

しかし私が見ていると、ほとんどの場合、優秀な人材は逃げ出して行きます。

 

経営トップである先生のレベル、お客様のレベル、

これから乗り越えていかなければならない現場の課題があまりに多くあるからです。

結局その経営者は、何度かトライをして借金だけ作り途中で諦めてしまいます。そんな事例を私は見てきました。

 

 

 

私は、池脇先生から教えていただいた話が、頭の隅にいつまでも残っています。

あるとき、仕事先で知り合った人から、

 

「コンビニエンスというマーケットをほとんどの会計事務所は全くわかっていない。

ここはブルーオーシャンである」と教えられました。

 

その人がいた会社が、経営破綻したところだったので、その人に協力をお願いして営業を一緒にスタートしました。

どうやって良いか全くわからない、無謀であり無手勝な営業戦術です。今考えると冷や汗ものです。

ですがコンビニという、一定の書類を本部から提供される標準化された大量の会計処理であるため、

優秀な人材を集めなくても、会計処理をすることができ、経営基盤がしっかりしてきました。

 

 

2020年9月の現在で、4500店舗弱。

 

直営を除く、日本全体の加盟フランチャイズ店舗の10%程度弱のシェアを押さえることができました。

 

 

これだけのシェアを押さえると、コンビニ本部もこちらを利用しようと、

いろいろとご提案をいただけるようになります。

コンビニを始め、いくつかの業界特化で私どもは経営基盤を築き、

その後は付加価値展開だと、大きな戦略の展開を目指したのです。

 

 

 

『シラス漁師とマグロ漁師』。

この逸話は、実は私の創作です。

 

 

シラス漁師オンリーから、いつマグロ漁師を目指すようになるのか。

このターニングポイントを決めることが、経営者のセンスです。

 

 

シラス漁師さんには大変失礼かもしれませんが、

 

 

シラスという一匹としては非常に付加価値の低いものを、

それほど難しくない技術で、それほど優秀でない人材で、それほど設備投資もかからない形で、

大量に獲るようにする。

 

 

まずは、戦略として企業のスケールを取る。

どこかの段階でシラス漁師オンリーから付加価値の高いマグロ漁も、別部門で展開する。

シラス漁師のままでは、大学新卒の人材たちを採るようになった今、

カロリーの高いマーケットを狙わないと20年先、30年先、

彼らに世間で胸を張れる給料を払うことができなくなると私は心配するからです。

 

 

シラス漁師の方も、これからますますシステム化を励み、

コスト競争に勝てる低価格でも生産性の高いモデルの改善に常にチャレンジしていきます。