「至誠の決算書」が金融機関との信頼関係をつくる──会計事務所の本当の役割とは
「会計事務所って、金融機関にとって“敵”のような存在なんです」──そんな衝撃的な言葉を、私は耳にしたことがあります。けれどそれは、私たち会計事務所に対する厳しい“期待”の裏返しでもあるのではないでしょうか。本稿では、私たちが「9ヶ月目仮決算対策®︎」を通じて目指している“至誠の決算書”とはなにか、そしてその先にある金融機関との信頼構築についてお話しします。
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熱意ある有志から聞いた「金融機関の本音」
私は、熱量の高い金融機関や公務員の有志が、肩書きを外して交流するネットワーク作りの場である「ちいきん会」に継続的に参加しています。ちいきん会は、もともとは金融庁内のプロジェクトであった「地域課題解決支援チーム」が一般社団法人となり、元みずほ銀行常務取締役の新田信行氏が代表理事を務める、地域創生・地域金融に携わる実務者たちの対話の場です。新田氏には、弊グループの特別顧問にも就任していただいています。
ある日の懇親会、信用保証協会の審査担当者がふと漏らした言葉が胸に残っています。
「会計事務所が作成する決算書には整合性がなく、“真実の財務”が反映されていないことが多くて困っています」
この本音は、私たち会計事務所が担うべき責任の重さをあらためて感じさせるものでした。
金融機関が“信じられない”決算書の実例とは
私たちが毎月行っている「9ヶ月目仮決算対策®︎会」では、驚くような決算書に出会うことがあります。
あるコンビニ運営法人では、貸借対照表に「現金600万円」と記載されていましたが、実際には店舗にそれだけの現金は存在しない。私が会計担当者にその理由を尋ねると「前の会計事務所から引き継いだまま」との回答でした。
また、別の法人では「仮払金2,000万円」が何年も放置されており、内訳も不明。資本金500万円の法人にとって、これは明らかな債務超過です。
こうした“つじつま合わせ”の数字は、意図に応じて黒字化を装うために処理された結果であり、審査の現場では通用しません。なぜなら、その「通らない理由」は、決算書の最初のページにすでに表れているからです。
「9ヶ月目仮決算対策®︎」で“真実”に真摯に向き合う
私たちが実践している「9ヶ月目仮決算対策®︎」は、9ヶ月時点で仮決算を行い、残り3ヶ月で経営・納税・財務戦略を立てるために取り組みです。
たとえば、
・明らかに黒字が見込まれる場合は、納税資金の確保と適法な節税策の検討
・赤字であれば、黒字化のための施策と予測調整
といった具体策を実行します。過去の処理を鵜呑みにせず、「今の私たち」が責任を持って数字の整合性を取り戻すこと──それが、会計事務所のあるべき姿だと信じています。
“粉飾”ではなく“説明責任”──書面添付の活用
過去の不整合な会計処理に出会ったとき、私たちは決して「前の会計事務所の処理だから」と責任を転嫁しません。
「今の会計事務所として、こう是正しました」と明言し、税務申告書には「書面添付制度」を活用して背景と根拠を説明します。また、仮払金や役員貸付金などについては、リスク管理商品の導入や外部スキームの活用による解決策もご提案します(※一部制度制限あり)。
私たちの使命は、金融機関をはじめとするステークホルダーに対して、数字の“信頼性”を証明することにあります。真実に真摯に向き合う。そんな「至誠の決算書」づくりを、私たちは重視します。そのことが、中小企業の社長のみなさま、そしてそのご家族や社員のみなさまの未来に直結すると考えるからです。
信頼は“真実”の上にしか築けない
会計事務所の役割は、粉飾の手助けではなく、経営の“信頼性”を高めることです。
私たちは、作成するすべての決算書に「真実が宿っている」と胸を張れるよう、説明責任を果たし、制度を正しく活用し続けていきます。
「この会計事務所なら、信頼できる」
みなさまからそう思っていただける存在であることが、私たちSAKURA United Solutionの矜持です。
- 関連法人の一覧
SAKURA United Solution株式会社(2022年7月より社名変更/旧:株式会社さくら経営)
弁護士法人法律会計事務所さくらパートナーズ(業務連携)
一般社団法人さくら労務実務研究所
人財創造有限責任事業組合