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専門家ネットワークによる「経世済民」の再起動

2025/05/30

私たちは昨年から、日本各地の「地域の未来」を支えるための新たな挑戦を始めています。志ある専門家ネットワークを構築し、地域経済の持続的な再生と発展を目指して、会計・税務・財務・労務・経営・金融などの知恵と経験を結集させています。構想段階であった「ASUNA ALLIANCE CONSULTING」が、各地域で徐々に芽を出し始めました。そもそも「経世済民（けいせいさいみん）」とは、“世を治め、人々を救う”という意味を持ち、政府や士業の使命とされてきたもの。本コラムを第1回とし、4回にわたって一般社団法人ASUNA ALLIANCE CONSULTINGの問題意識や理念、具体的なソリューションについてお伝えします。第1回では、なぜ専門家ネットワークが必要なのか、その背景についてお伝えします。

今がまさに士業の転換点

日本各地で、会計事務所や社会保険労務士事務所などの士業事務所が厳しい状況に置かれています。人口減少と人手不足により、地域企業だけでなく、士業事務所自体が人材難に直面。会計事務所では、お客様企業向けのサービス対応が十分にできない状態に至り、結果としてお客様や金融機関への情報提供が遅れ、資金調達のお手伝いも十分にできないようなことになっています。現在の人材の流出が続き、経験値の高い人材が充足されず、経験値の低い人材を取らざるを得ず、十分な実力のない人材を使うことによってミスが発生し、ますます厳しくなると言うような負のスパイラルに至っています。

また、急速に進化するテクノロジーへの対応も後手に回っています。クラウド会計、AIアシスタント、電子契約といった技術が当たり前となる中、旧来のアナログ業務から脱却できないままの士業事務所も多く見られます。

加えて、地域経済全体の縮小に伴い、士業への報酬の支払いが困難となる地域企業も増加。今までと同じ仕事やっていながら、値下げ要請が来るような状況に至ります。地域企業、地域士業、地域金融機関の3者が“変化の中で変化できない”という構造的な問題が、地方の経済循環を深刻に蝕んでいます。

3者連鎖の負のスパイラル・信頼の崩壊が地域経済を蝕む

この現状を象徴するのが、「不信」による3者（地域企業・地域士業・地域金融機関）間の負のスパイラルです。

・地域企業は、人材確保と経営の見通しが立たず、業績不振で士業への支払いも難しくなる。

・地域士業は、人手不足と報酬低下で、抜本的な支援策を提供できなくなる。

・地域金融機関は、経営の不透明性と支援策の欠如から、融資判断が慎重になり機能が低下する。またリスケに至った顧客企業への対応が不十分で、細やかな経営支援ができない状況になる。

こうした悪循環は、地域全体の経済の健全な循環を妨げ、縮小均衡へと向かわせます。すでに、人口100万人規模の中核都市においてさえも、こうした課題が顕在化しています。これはもはや一部地域の話ではなく、全国的な構造的な問題であると言えるのではないでしょうか。

集合知のエコシステムが求められる

こうした時代の変化に真正面から向き合い、経済の本義である「経世済民」を地域から再起動させることを目的として立ち上げられたのが、一般社団法人 ASUNA ALLIANCE CONSULTINGです。

この専門家ネットワークは、士業、金融人材、コンサルタントなど、各分野のプロフェッショナルが専門性を持ち寄り、地域に根差した「集合知のエコシステム」を築こうという試みです。個々の専門家が単独で課題解決にあたるのではなく、連携・補完しあうことで、複合的かつ根深い課題に対して包括的にアプローチできる体制を目指しています。集合知のエコシステムは、それぞれの課題解決をする専門家の地域格差を埋め合わせる機能も持っています。

その思想の根底には、「不信」による3者間の負のスパイラルから「地域企業ポジティブスパイラル」への転換があります。これは、信頼をベースにした地域企業・地域士業・地域金融機関の3者が、互いに機能し合いながら、持続可能な地域経済を再構築するという構想です。