サイゼリヤやニトリから学ぶ、プロフェッショナルの業務提案力
サイゼリヤの「トータルコーディネーション」やニトリの「ホームファニッシング」。これらが提案しているのは単なる商品ではなく、「プロが選んだ食文化や暮らし方」です。私たち会計事務所の仕事も、本質的には同じ。「業務のプロフェッショナル」として、ベストな業務の手法をご提案する責任があるのです。本稿では、サイゼリヤやニトリから学ぶ業務提案の在り方について考察します。
サイゼリヤとニトリに見る「プロの提案力」
コロナ環境下でも、苦しみながらもしっかり成長しているサイゼリヤのメニューや、ニトリの家具。いずれも安価でバリエーションも豊富です。実は、私は30代にサイゼリヤの正垣創業者から、毎月の研修会でその意図を学んでおりました。これらの商品ラインナップには、プロの知見を集約した「生活提案」が詰まっています。
料理の例でいえば、「このメニューとこのワインが最高の相性」というコーディネーションの価値。家具やカーテンを一式そろえる際、「この配色とこのサイズ感がベスト」と導いてくれる価値。いずれも、プロフェッショナルの経験や知識に裏打ちされ、標準化された最もコスト対生産性=コストパフォーマンスの高い“ベストプラクティス”を提示しています。
これは、私たち士業事務所の業務にも通じます。例えば、経理や給与計算などの手続き。多数のケースをこなしてきたプロだからこそ、「このシステムを活用して、この方法がもっとも効率的で、ミスが少ない」という“最適解”が見えているはずです。その方法を、お客様に対して自信をもってご提案できてこそ、真のプロフェッショナルといえるのではないでしょうか。
プロが選ぶ「標準」が、顧客と組織を守る
アウトソーシングや業務支援を担う立場として、最も避けるべきは「顧客の我流に従いすぎること」です。もちろん、お客様のご要望に耳を傾けることは大前提ですが、そのまま受け入れてしまうのは、結果的にはお客様を危険にさらすことにもなりかねません。
世界で主に大企業で活用されている“SAP”というシステムがあります。この関係者から伺ったのですが、世界中で日本がもっともカスタマイズを好むビジネス行動を取ると言われています。
さまざまな業種で磨き上げられている世界の業務ソフトを、わざわざ自分たちのやり方に戻させている。さまざまな業種で、磨き上げられたシステムを、世界の標準化を求めず、自分のローカルの世界に引き戻す。SAPの開発関係者は、それに首をかしげているというのです。
例えば、経理の仕組みをそれぞれバラバラの仕組みで変えていては、その会社に働いている今の人たちのためにカスタマイズするわけで、改善をせず、属人化が進み、業務の再現性が損なわれます。引き継ぎや確認が難しくなり、だれが担当しても同じ品質を保つという基本が崩れてしまいます。
だからこそ、プロフェッショナルには「標準化された最速でコストパフォーマンスの高い最適なやり方=ベストプラクティス」を定め、それをご提案し、時には少々圧力をもって勧める姿勢が求められます。それが組織全体の品質を保ち、効率を上げ、結果的に顧客の利益にもつながるのです。
「業務提案」はプロフェッショナルの矜持
私は、こうした考え方を「業務提案」と呼びます。お客様にとってなにが最も合理的で、効率的で、持続可能か。それを見極め、押し付けではなく“ご提案”という形で導く。これが、私たち会計事務所の使命です。
私たちのスタッフの中でも、入社経験が浅く、お客様に十分なご満足をいただくご提案ができない場合があります。そのために私たちはAIを活用し、ご提案をAIの力を使って、提案準備も驚くほどに簡単に高品質にすることができます。現在開発中でございます。
サイゼリヤやニトリから学び、私たちもまた、無限の選択肢の中から「この方法で十分、むしろこれが最善」と言える経験と判断を磨かなければなりません。
「お客様の希望に合わせること」も大切ですが、「最良の解決策をご提示する」ことこそ、プロの存在意義ではないでしょうか。そしてそれは、単なる業務の効率化ではなく、顧客の事業と人生を支える「業務提案」であり、時に「人生提案」でもあると私は考えています。
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