経営者人生を遠回りしないために

独立して30年余り。過去を振り返ってみれば、随分と遠回りをしたと感じることがあります。後悔はありませんが、もっと効率良く会社を成長させられたのかもしれない。もっと効率良く経営者として成長できたのかもしれない、と思うこともあるのです。経営者人生を遠回りしないためには、ときには壁打ちの壁になってくれて、ときには原理原則を教えてくれるメンターの存在が欠かせません。本稿では、メンターの見つけ方についてお伝えします。

 

 

※本稿は、SAKURA United SolutionのYouTubeチャンネル内に開設した、iU学生起業家の茂木大暉氏(GADGETANKER LLC CEO)の経営相談に応える新コーナーより一部抜粋、編集したものです。

 

※iU(iU情報経営イノベーション専門職大学):2020年に設置され、東京都墨田区文花に本部を置く日本の私立専門職大学。産業界と連携した新しい学び、イノベーションを起こす人材を育成している。井上一生は、iUの客員教授を務めている。

 

【iU学生起業家の疑問・課題をトコトン解決】深夜ラジオ感覚で“聞く”経営相談室

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起業家・経営者には、なぜメンターが必要なのか

私がここに書き留めていることは、あくまでも一意見であり、答えは複数あると思います。原理原則はあっても、絶対的な答えはないのが経営です。その前提で、読み進めていただけたらと思います。

 

私は異業種交流会等、経営者が集まる場によく足を運びますし、会社として企画・運営することもあります。交流会では多くの起業家・経営者の方々とお会いするわけですが、自分よりも若い起業家・経営者の方々とお話をすると「もったいない」と思うことが多々あります。かつての私自身もそうだったように、多くの起業家・経営者は、随分と遠回りをしています。

 

もちろん、後々になって「あぁ、あのときの経験は無駄ではなかったのだな」と感じることも多々あるわけですが、一方で「やっぱり無駄だったな」と感じることもたくさんあります。

 

そんなとき、「あのときに身近にメンターがいれば」と思います。相談できるメンターがいれば、やるべきこととやらなくて良いことが明確になったのだろうなと。

 

起業家・経営者は日々を忙しく過ごし、志に燃えているわけですが、人間ですからやっているうちに疲れるし傷つくこともあります。

 

「やってみなければわからない」とガードを下げるわけですが、結果とすると

 

「大抵、努力は報われない」

 

というのは、悲しいですが本当で、日々忙しくしていると言っても無駄な努力をしていることが、本当に多いのです。

 

「これは良いけど、それは無駄だから辞めた方が良い」と言ってくれる人が身近にいないから、活用もされない提案書を徹夜してつくってきたのです。

 

無駄な努力をしないために、無駄な努力をできる限り少なくするために、壁打ちの壁になってくれる人をメンターにすることが大切です。「こういうとき、どうすれば?」という問いをひたすらくり返し、相談に乗ってくれる相手が起業家・経営者には絶対必要です。

メンターの見つけ方とメンターの適任者

しかしながら、起業して間もない頃にメンターと呼べるような人と出会えることは稀です。メンターを見つけるためには、いろいろな人に会うしかないでしょう。

 

私どもであれば、経営合理化協会の元専務理事の熊谷さん、オリックス元副社長の川中さん、元みずほ銀行常務の新田さん(出会った順)。しかしながら、このような方々は、私どもがある程度のサイズになってからメンターになっていただくことができたのです。

 

また、経験豊かであればだれでもメンターにして良いわけではありません。業界でVIPとされている人が、あなたのメンターとして適切な人物かどうかは別の話です。

 

それと、事業構想やアイデアを頭から否定する人はメンターにしてはいけないと思います。否定するのは簡単なことです。肯定しないと、言葉に責任は宿りません。

 

アイデアの多くは、「やってみないとわからない」というのが本当のところです。行動しながら随時修正して、よりベターを探って最適化させていく。固定観念や先入観をなくし、変に方法を固めず、どんどん直していく。そんな姿勢で相談に乗ってくれる人が、メンターには良いでしょう。

 

自分だけで仕事に取り組んでいると、どうしても思い込みが生まれます。すると盲点ができ、冷静に考えれば判断できるはずのことも判断できなくなってしまう。そういうときに相談できる相手が必要です。

 

私が思うメンターの適任者は、例えば以下のような人物です。

 

・道から大きく踏み外しそうになったときに、冷静な意見をくれる人

・モヤモヤや手順を整理してくれる人

・オープンマインドな人

・世代や業界、専門分野を越えて相互補完できる人

メンターになってもらうためのアプローチ方法

運良くメンターと呼べるような人と出会えて、さらに運良くその人にメンターになってもらえれば良いのですが、創業期にメンターと出会えたらかなりの強運の持ち主です。

 

例えば、著者の中にメンターになってほしい人がいるなら、著者に手紙を書くのも良いでしょう。今なら、SNSで著者と直接つながることもできます。今の時代、著者に手紙を書く人も少ないでしょうから、手紙というオールドメディアもバカにはできません。その際は、気の利いたデザインの切手を貼って送ったり、手書きにしてみたり、なにか印象に残るような工夫をすると尚良いでしょう。

 

また、業界のキーパーソンをメンターにしてビジネスを加速させたいという起業家・経営者の方もいらっしゃると思います。業界のVIPとされるような人に気に入ってもらうには、良い意味で人たらしになることです。また、あなたの将来性とお人柄によるものです。

 

相手はVIPですから、簡単に親しくはなれません。相手に自分を理解してもらおうとすることが、まずは重要です。手マメ口マメ筆マメ、とにかくマメに連絡すること。それを続けることで、突破口が開けるかもしれません。

 

運良くその人と話す機会を得たなら、「あなたを尊敬しています。メンターと呼ばせてください」と伝えてみるのも良いでしょう。尊敬していますと言われて、嬉しくない人はまずいません。