人口減少時代の処方箋──北海道“道東のへそ”と呼ばれる弟子屈町で考えた「デュアルライフ・ワークバランスモデル」という選択
先日、北海道・弟子屈町役場および商工会を訪問する機会をいただきました。地域で語られたキーワードは、極めてシンプル。「すべての経営課題は、人口減少から始まっている」。この言葉の重みを、私は弟子屈町を歩き、弟子屈町の方々と語り合う中で痛感することになりました。本稿では、地域が直面する現実と、そこから見えてきた一つの可能性についてお伝えしたいと思います。

地域課題の“根”はどこにあるのか
商工会で伺った地域(中堅・中小)企業の課題は、実に明確でした。
人口減少 → 高齢化 → 人手不足 → ノウハウ・技術の継承困難 → 経営難
極めて論理的な連鎖です。
施工技術者が不足し、工事が進まない。
硫黄温泉地特有の専門技術があるにもかかわらず、その伝承が難しい。
農業では一部外国人労働者の活用が進んでいるが、他産業には広がらない。
実際に街中を歩いてみると、外国人観光客の姿は見えます。しかし、「この地域で働いている外国人」はほとんど見かけません。観光客はいる。だが労働力がいない。この構造は、多くの地方都市で共通して進行している問題でもあります。
「移住」だけが解ではない
地方創生という文脈では、どうしても「移住促進」が語られます。もちろん理想系としては素晴らしい。しかし、冷静に考える必要があります。
人は、そう簡単に生活基盤を変えません。そこで私が強く現実味を感じたのが、二拠点居住・二拠点活動モデルです。
都会で働く人々にとって、
・心のリトリートの場
・デジタルワークの拠点
・人生の質を高める生活の選択肢
として地方を位置づける。仕事の一部を都会から持参し、この世界有数の観光資源を楽しみながら働く。ワーケーション、シェアオフィス、シェアハウス──形式は何でも良いと思います。
まずは「完全移住」ではなく「関係人口の拡張」。
ここから始める方が、よほど実装可能だと感じています。
私は、こんな新しい働き方を「デュアルライフ・ワークバランスモデル」と名付けます。
「地方を助ける」という傲慢を捨てる
私は今回の視察で、ある種の認識転換を迫られました。
地方を助ける、ではない。
私たちが地方に助けられるモデルを構築する。
この視点は、極めて重要です。私たちがその地域を訪れることで、宿泊、飲食、交通、様々な消費が発生する。つまり地域に売上が生まれる。同時に、私たちは都市部の専門知、ネットワーク、テクノロジーを持ち込める。
理想論ではなく、
理想 × 経済性 × 持続可能性
この三位一体のバランスが、これからの地方連携モデルの核心だと考えています。
経営支援人材の“真空地帯”がある
今回、役場や地域関係者との対話でくり返し耳にしたのがこの言葉でした。
「経営を相談できる人がいない」
これは深刻です。
資金調達、財務、税務、人事・労務、組織設計、事業戦略。企業経営には専門的な知見が不可欠です。しかし地方では、そのリソースが圧倒的に不足しているのです。
一方で都市部には、専門家・士業・実務家が集中している。ならば結論は明確です。仕組みで繋ぐしかない。
・地方の経理担当者
・商工会の経営指導員
・地域の実務支援者
こうした方々を後方支援するネットワーク。私はこの「専門家二拠点モデル」を、本気で確立すべき時期に来ていると今回の視察で確信しました。
アイヌ文化に学ぶ「競争しない経済観」
今回、80歳のアイヌ長老のお話を伺いました。
「多くを奪わない」
「競争しない」
「助け合う」
3000年前から続く精神世界。
都市型資本主義にどっぷり浸かった私たちにとって、これは極めて示唆的です。
人口減少社会において、拡大競争モデルは機能し続けるのか?
この問いを、地方はすでに現実として突きつけています。
「地方再生」という、頻繁に使われる言葉があります。しかし私は、こう思っています。
再生すべきは地方だけではない。
都会で疲弊した人間の再生でもある。
二拠点モデルは、地方政策でもあり、同時に人生戦略でもある。
地方と都市
経済と生活
効率と幸福
これらを対立概念ではなく、統合的に設計し直す時代が始まっています。
本業の中から社会課題解決を目指す!
その実践の場として、弟子屈町のような地域との関係性は、これから極めて重要な意味を持つでしょう。
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