【連載コラム②】組織再編で解決!後悔しないための事業承継対策 知識編「組織再編を成功させるための『税』の知識」

組織再編を活用した事業承継対策を成功させるには、その前提となる「税」の知識が不可欠です。「知っているか、知らないか」で、将来の納税額が場合によっては数億円単位で変わることもあります。第2回では、税の基本となる「資産の評価額ギャップ」の考え方と、多くの経営者が誤解しがちな税金対策の落とし穴について、プロの視点から解説します。

「財産管理会社」が最強のツールである理由

事業承継対策の文脈で頻繁に登場するのが「財産管理会社(資産管理会社)」です。なぜこの会社がこれほどまでに重要視されるのでしょうか。その最大の理由は、オーナー個人と事業会社の間に「法人」というクッションを挟むことで、対策の選択肢と自由度が格段に広がるからです。

 

具体的には、オーナーが事業会社の株式を直接保有するのではなく、自身がオーナーとなる財産管理会社に事業会社の株式を持たせる「持株会社」の形を作ります。そして、この財産管理会社に節税効果の高い資産を集約させるのです。

 

相続税の計算では、資産の種類によって評価方法が大きく異なります。

 

現金・預金:評価額は額面の100%

生命保険:解約返戻金の額で評価(100%を下回ることが多い)

不動産:時価ではなく路線価や固定資産税評価額で評価(時価の60%~80%程度になることも)

 

この「時価と相続税評価額のギャップ」を戦略的に活用します。

 

たとえば、財産管理会社が現金で収益不動産を購入すれば、その瞬間に資産の評価額を数千万円単位で圧縮できる可能性があります。こうした対策を財産管理会社で行うことで、本業である事業会社の経営に影響を与えることなく、承継対象となる株式の評価額だけを効率的に引き下げることが可能になるのです。

節税商品は「節税」ではなく、ただの「課税の繰り延べ」かもしれない

「節税のためにこんな保険に入った」「節税のためにこんな商品を買った」という経営者の方は非常に多くいらっしゃいます。確かに、保険料の一部を損金として計上することで、その期の法人税を減らす効果はあります。しかし、これは本当の意味での「節税」と言えるのでしょうか。

 

注意すべきは、これらの保険商品の多くが、将来解約した際には解約返戻金が「益金(利益)」として計上され、法人税の課税対象になるという点です。つまり、税金の支払いを将来に先送りしているだけの「課税の繰り延べ」に過ぎないケースがほとんどなのです。そして、繰り延べできる保険商品すら今ではほとんどありません。

 

過去、日本の法人税率は下がり続ける傾向にありました。その時代であれば、税率が高い時に損金を計上し、税率が下がった時に益金として戻すことで、結果的に節税になりました。しかし、現在の税制環境では法人税率の引き下げは頭打ちとなり、むしろ増税の議論も出てきています。このような状況で安易に課税の繰り延べを行えば、将来、今より高い税率で課税されるリスクすらあるのです。

 

本当の「節税」とは、相続税のように「人生で一度きりの大きな税負担」を、計画的な対策によって確実に、そして合法的に減らすこと。目先の法人税だけでなく、事業承継という大きな視点から、その対策が本当に有効なのかを見極める必要があります。

なぜ顧問税理士は「組織再編」を提案しないのか?

「うちの顧問税理士は、毎月の試算表は作ってくれるけど、相続の話は全くしてくれない」。こうした不満は、事業承継を考え始めた経営者からよく聞かれる声です。その理由は、税理士の専門分野の違いにあります。

 

多くの顧問税理士の主な業務は、過去の取引記録を整理し、税務申告書を作成する、いわば「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」的な代行業務です。これは「過去」の事実を正しく処理する能力が求められる仕事です。

 

一方で、事業承継対策は、「未来」の相続を見据えて、税法だけでなく会社法や民法といった複数の法律知識を駆使し、最適なプランを設計する「コンサルティング業務」です。そこには、過去の数値をまとめる能力とは全く異なる、高度な専門性とプランニング能力、そして豊富な経験が求められます。

 

たとえるなら、顧問税理士が「町のかかりつけ医」だとすれば、事業承継の専門家は「心臓外科のドクター」のような存在です。風邪の相談を心臓外科医にしないように、事業承継という大手術は、その道の専門家に任せるべきでしょう。「申告のプロ」と「対策のプロ」の役割は違うということを理解し、最適なパートナーを選ぶことが、後悔しない事業承継の第一歩となるのです。

 

次回の第3回では、「事業承継のケーススタディ」をお伝えします。

 

 

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