ノブリス・オブリージュ──AI時代の「高貴なる責任」を果たすということ
AIが社会を変え、テクノロジーがビジネスのあらゆる領域に浸透する時代。そんな中で、真に「価値ある仕事」とは何でしょうか? 先日、弊グループのAI開発・事業化の顧問であり、東大博士課程から有名コンサル企業を経て弊社にも関わってくれている一人のエリートと、2時間にわたり語り合いました。テーマは、「ノブリス・オブリージュ(高貴なる義務)」。才能と知性を授かった者が、その力をどのように社会に還元していくのか――その問いは、現代を生きる私たちにとっても同じです。
AIの世界にも「高貴なる責任」がある
「高いテクニックの世界しか見えなくなるのが、東大出身者の苦悩です」
顧問の彼は、私にそう言いました。
確かに、天才的な頭脳を持つ人々ほど、ハイスペックな研究や最先端技術の開発に没頭しがちです。けれど、私は彼にこう伝えました。
「社会に役立つということは、そんなハイレベルなことばかりじゃない。もっとローテクでも、人々の生活を支える“現場の課題解決”こそ、社会を動かす原動力なんじゃないか」
この言葉に、彼は深くうなずいてくれました。AIも同じです。2年先のハイスペックを追うより、今の社会課題を今の技術で解決することこそ、真の価値ではないでしょうか。
ノブリス・オブリージュ──才能は、社会のために使う
「ノブリス・オブリージュ(noblesse oblige)」
とは、フランスの言葉で“高貴なる者は義務を負う”という意味です。もともとは、特権階級がその地位に応じて社会的責任を果たすという倫理観でした。現代では、エリート層や富裕層が社会貢献や慈善活動を行うこと、企業がCSR(社会的責任)を果たすこととして受け継がれています。
本格的なAI時代に突入しようという今、この考え方は改めて問われていると感じます。
「知」を持つ者の責任とはなにか。
「技術」を持つ者の使命とはなにか。
AI開発者も、経営者も、士業も同じです。
自らの能力を「自分のため」だけでなく、「社会のため」に使う。
そのとき、私たちは単なる職業人を超えて、「高貴なる働き手、担い手」へと変わるのではないかと感じます。
AIの“現場力”を磨く──中小企業のリアルに寄り添う開発へ
私たちは、AI開発を行う中で「現場に役立つAI」を最優先にしています。
なぜなら、99.7%の日本企業は中小企業だからです。
AIがどれほど進化しても、使う人がいなければ意味がありません。
会計・税務・経営支援の現場で、今まさに困っている社長の隣で働くAIでなければ、社会に根づかないのです。
高スペックを追い求めても、AIの世界では2年後には古びてしまう。
それなら、いま必要とされている課題を、今ある技術で解決するほうがよほど価値がある。
この発想こそが、「社会に奉仕するテクノロジー」の原点だと思います。
中小企業の経営にも「ノブリス・オブリージュ」の精神を
「ノブリス・オブリージュ」は、決して一部のエリートだけの話ではありません。
地域で事業を営む社長も、社員や顧客、取引先、地域社会に対して責任を持つ“高貴な存在”です。
経営は単なるお金儲けではなく、地域の未来を守る行為。
だからこそ、利益を社会に還元し、社員の生活を支え、地域経済を支えることも、立派なノブリス・オブリージュの実践です。
AIのような新しい力を活かすことも、その延長線上にあります。
自社の生産性を高め、社員の働く時間を守り、より多くの人に価値を提供する。
その努力こそ、経営者としての“高貴なる義務”ではないでしょうか。
言い換えれば、現代における高貴なる者は「社会を照らす者」のこと。
社員にとって、顧客にとって、家族にとって、小さくとも社会を照らす存在であること。その責任を果たすために、AIをはじめとする新しい力を使い、人を幸せにする経営を追求する。
それが、私の考える現代の「ノブリス・オブリージュ」です。
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SAKURA United Solution株式会社(2022年7月より社名変更/旧:株式会社さくら経営)
一般社団法人さくら労務実務研究所
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