知性と行動、そして「遊び」──評論家で終わらないための経営実践力

私は毎年、埼玉大学経済学部で学生のみなさんにお話をする機会をいただいています。公務員輩出大学としても知られるそんな場で、私はあえて耳障りの良くない言葉を投げかけています。「リスクを取らなさすぎる」「群れて安心しすぎている」。これは学生の方々に向けた言葉であると同時に、実は経営者や経営支援専門家である私たち自身にも向けられた問いでもあります。

「頭の良さ」と「行動力」は別物

世の中には、実に「頭の良い人」が多くいます。分析力があり、知識もあり、理屈も正しい。しかし、私は時折こう感じるのです。

やらない理由を語る能力ばかりが洗練されていないか。

 

うまくいく保証など、どこにもありません。
やってみなければ分からない。

 

それにもかかわらず、

 

●慎重に検討して…
●リスクを整理して…
●市場環境を見極めて…

 

そう言っている間に、時間だけが過ぎていく。
特に最近はAIが普及・加速度的に成長し、時代の変化がさらに激しい。
検討している間に、取り残されるリスクもあります。

 

私は「やる前論評」という姿勢が好きではありません。
ダメなら、次を考えればいい。
ベンチャーとは若者の特権ではありません。
何歳になっても、挑戦者であり続けることはできる。

 

どんなことでも、挑戦するのに遅すぎるスタートはないと私は思うのです。

フィッツジェラルドの言葉が突き刺さる理由

『グレート・ギャツビー』の著者として知られるアメリカの作家、F・スコット・フィッツジェラルドの有名な言葉があります。

 

「知性とは、ふたつの対立する概念を同時に心に抱きながら、しかも正常に機能し続ける能力である。だが、行動こそが知性の正しい尺度である」

 

私はこの一節に、経営の本質を見ます。

 

知識は重要です。
戦略も必要です。
分析も欠かせません。

 

しかし、行動しなければ、すべて無価値です。
どれだけ高度な経営理論を語っても、AIに高度な分析をしてもらっても、実行されなければ意味がない。
評論家と実践者の決定的な違いは、ここにあります。

 

机上の空論で終わらせず、まず一歩を踏み出すこと。
小さくても行動を起こし、その結果から学ぶ姿勢こそが、個人と組織を成長させる真の「知性」なのではないでしょうか。

「孤独を鍛える」という視点

もう一つ、私が強く感じることがあります。

 

群れていることへの過度な依存。

 

誰かと一緒にいれば安心。
同調していれば安全。
反対意見を言わなければ波風は立たない。

 

しかし、付和雷同で社会が変わるでしょうか。
イノベーションが生まれるでしょうか。

 

経営も同じです。

 

●横並び経営
●前例踏襲
●業界常識への依存

 

これらはすべて「群れの論理」です。
時に孤独を引き受け、自分の頭で考え、自分の責任で決断する。
この胆力なしに、経営者は務まりません。

「遊び」を失った大人たちへ

私は最近、別の意味での危機も感じています。
感性の哲人・行徳哲男先生は、

 

今の人は遊びが足りない。

 

と仰います。

 

『梁塵秘抄』の「遊びをせんとや生まれけむ」。
子どもの無邪気な声に、大人の身体までもが揺り動かされる。

 

この感覚は、実に示唆的です。
遊びとは、単なる娯楽ではありません。

 

●余白
●柔軟性
●創造性
●発想の跳躍

 

経営においても不可欠な要素です。
効率、合理性、最適化──それだけを追い続けた先に、硬直した組織しか残らないことは歴史が証明しています。

経営も人生も「実験」である

私は学生さんにも、経営者にも同じことをお伝えしています。

 

やってみなければ分からない。

 

失敗は避けるものではなく、活用するもの。
挑戦とは計算ではなく、意思。
評論ではなく実践。
理屈ではなく行動。
そして、ときに遊び心を忘れないこと。

 

知性とは、知識量ではない。
意思決定し、行動へ変換する力なのではないかと思うのです。

 

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