「約束を守ること」は経営者の職責であり資質

「経営者とは?」という問いは、シンプルでありながらも答えのない難問です。もちろん人それぞれ答えは異なり、またそのときどきによっても答えは変化するわけですが、本稿では今日現在の井上一生が考える「経営者」について言語化しています。経営者としてなにかお悩みのある方、これから起業して経営者を目指そうという方にも、ぜひお読みいただけたらと思います。

 

※本稿は、SAKURA United SolutionのYouTubeチャンネル内に開設した、iU学生起業家の茂木大暉氏(GADGETANKER LLC CEO)の経営相談に応える新コーナーより一部抜粋、編集したものです。

 

※iU(iU情報経営イノベーション専門職大学):2020年に設置され、東京都墨田区文花に本部を置く日本の私立専門職大学。産業界と連携した新しい学び、イノベーションを起こす人材を育成している。井上一生は、iUの客員教授を務めている。

 

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夢と野望、人生計画を書き出した起業当初

 

「経営者とは?」という問いの答えは、世代によっても人によっても異なるでしょう。稼ぐことに着眼する人もいれば、夢やビジョンの実現、社会貢献に着眼する人もいます。

 

夢や野望、もっと言えば「良い家に住みたい」「良い車に乗りたい」「良い生活がしたい」というシンプルな欲求が起業や仕事へのモチベーションになる人もいます。私が起業した30数年前は、そのような物欲が原動力になっている人が少なくありませんでした。私もそんな一人だったでしょう。

 

起業した頃、先輩にアドバイスされて実行したことがあります。それは、自分と家族の時系列で人生計画をつくり、子どもたちの学費や生活費、住宅費などの資金需要を書き出しておくことです。

 

「子どもにどんな教育をしたいか」「自分や配偶者が何歳のとき、子どもたちは何歳で、そのときにいくら必要になるのか」「家や車、別荘など必要なもの、ほしいもの」など、すべて思いつく限り書き出しました。その頃は、別荘やヨット、中古のボルボがほしいと思っていました。そうして、必要な可処分所得を算出したのです。結果、そのとき書き出したものはすべて手に入れることができました。

 

 

年齢を重ねて変化する価値観や志

 

しかし最近は、当時のような物欲はなくなっています。いえ、正直に言えばまたヨットがほしいなとも思っているのですが、物欲よりも「どうやったら、周りのみんなを幸せにできるのか」の方が圧倒的に関心も高く、私の原動力になっています。

 

私は経営者ですから、能書きではなく実践でそれを示し、実現していきたいと思っています。私の周りの人たちが、物心両面で良い人生を送り、豊かになってもらうこと。会社がしっかり稼いで、社員のみなさんやビジネスパートナーのみなさんにしっかりと給与や報酬を払えるようになること。特に社員のみなさんには、労働分配率から適性に給与を払い、なおかつ同業他社よりも多く払えるようになること。そして、みなさんの自己成長の場も提供したい。

 

起業から30年以上が経ち、さまざまな経験を得たことで、価値観や志、目指す姿も変化してきました。

 

 

「こういう経営者にはならない」も書き出しておく

 

起業当初、人生計画の他にもうひとつ書き出したことがあります。それは、「こういう経営者にはならない」ということです。

 

起業する前の職場で、人格を否定されたことがありました。そういう言葉は、今も私の心に残っています。ですから私は、人格を否定するような言葉は使わないようにしようと決めました。

 

また、お金や物欲のために悪事に手を染める人もいます。「稼げれば良い」という方に引っ張られると見境がつかなくなり、一度悪事に手を染めると悪事に悪事を重ねることになるのです。

 

「やりたいことリスト」と同時に、「やらないことリスト」も書き出しておき、ときどきそれらを読み返すようにすると、自分の軸ができ、経営者としての成長を早めてくれるかもしれません。

 

自分の周りの人を不幸にせず、周りの人に報いて幸せにする。そんなことにチャレンジさせてもらえる、有難い立場にあるのが経営者です。ですから、経営者は約束を守らないといけない。約束を守れないなら、経営者を辞めた方が良いとさえ思います。「決まった日に給与を払う」という、経営者であれば毎月行っている当たり前のことも、「約束を守る」という極めて大切なことのひとつです。これは経営者の職責であり、約束を守れるかどうかは経営者としての資質だと思います。

 

 

健全に大ボラを吹けるのが経営者

 

「あれをやりたい、これをやりたい」と、無理難題にチャレンジする人が世の中には必要です。そんな人が起業家であり、チャレンジできること自体が特権のようなものです。

 

ビジョンや夢は大きく。ウソはいけませんが、ホラは良い。周囲から「ちょっとアホだね」と言われるくらいの方が、野心溢れる経営者には良いのではないでしょうか。健全に大ホラを吹くことも大切な資質だと思います。

 

そして、ビジョンや夢から、今の自分を見下げることが重要です。ビジョンや夢を見上げてしまうと、そこは遠い世界になってしまうからです。高いところから今の自分を見下げることで、「こういう勉強が必要だ」「こういう人とのつながりが必要だ」「達成するためには、今なにを準備すべきか」など、より具体的に考えることができるのです。

 

起業当初は、十分な資金も人手も経験も技術も時間もありません。あるのはビジョン、夢だけ。だから経営者は、健全に大ホラを吹くのです。