新しいビジネスモデルを「発明」するのではなく「発見」し、さらに書き直し続ける

起業1年目にすべきことは、新しいビジネスモデルを「発明」することでしょうか? もしくは、描いたビジネスモデルを愚直に追求することでしょうか? 「発明するな、発見せよ」という言葉は、井上一生がメンターであるサイゼリヤの創業者・正垣泰彦氏から伝えられた言葉です。なぜ「発明」ではなく「発見」なのか。本稿で解説します。



※本稿は、SAKURA United SolutionのYouTubeチャンネル内に開設した、iU学生起業家の茂木大暉氏(GADGETANKER LLC CEO)の経営相談に応える新コーナーより一部抜粋、編集したものです。


※iU(iU情報経営イノベーション専門職大学):2020年に設置され、東京都墨田区文花に本部を置く日本の私立専門職大学。産業界と連携した新しい学び、イノベーションを起こす人材を育成している。井上一生は、iUの客員教授を務めている。


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アイデアマンでは人生が3回あっても成功しない


私は若い頃、メンターであるサイゼリヤの創業者・正垣泰彦さんに、交流会でさまざまなビジネスアイデアを持っていって相談したことがありました。当時、正垣さんにこう言われたことがありました。


「君はアイデアマンだな。だけどアイデアをいくつ抱えてても、君の一生では成功できない。君のアイデアが正しいかどうかは、俺に聞くよりもアメリカを見に行くと良い。アメリカに、そのビジネス分野で盛り上がっているものがあったらそれを日本中にローカライズしてやれば良い。アイデア一発で勝負していては、人生が3回あっても成功しないよ」


ビジネスの最先端は、世界一の経済大国であるアメリカに多くあります。新陳代謝の良い、言い換えれば弱肉強食で入れ替わり・移り変わりの激しいアメリカでは、洗練されたビジネスモデルが存在しています。ある種の「ビジネスモデルの集大成」を、アメリカに行けば発見することができるのです。



ビジネスモデルを「発見」しに行く


「アメリカのビジネスは、10年、20年先行している」と言われます。自分のアイデアや、自分で考えているビジネスを、アメリカ企業のホームページやオウンドメディア、オンラインコミュニティなどにアクセスして探してみるのも良いでしょうし、実際に視察に行って現地の企業を見て回るのも良いでしょう。


正垣さんが「発明するな、発見せよ」と言ったのは、起業家や事業家ではなく発明家になると、自分の仕事や商品に惚れて視野が狭まったり、バイアスがかかってしまうからと言うことでしょう。「成功するはずだ!」と思いつきでするリスクも減らせます。「君の発明が本当に世の中に存在し得るのか、その存在証明をアメリカに行って探して来い」と言われました。


例えば、ニトリの似鳥昭雄さんはバス数台に社員を連れて新しいビジネスを視察に行く。ビジネスや商品のアイデアを、どこか別の企業のビジネスや商品と比較して、なにが違うのかということを、縦、横、斜めのあらゆる角度から検証する。そうして企画書をつくり直して、練り直して、いろいろな人の意見を聞いて、またつくり直して、練り直して…そうして、成功の確度を上げていくのです。



起業1年目でもビジネスモデルを書き直し続ける


もちろん、企画書をつくるだけではビジネスは前進しませんし、実現もしません。企画や計画の練り直しは必要ですが、その後は必ず行動し、実行し、改善しなければいけません。起業1年目であっても、計画し、実行し、チェックし、改善するというPDCAサイクルは必須であり、経営の原理原則です。このPDCAサイクルのなかには、「自社のビジネスモデルの未来図を持っている企業や人がどこにいるのかを探す」というプロセスも含まれます。それがまさに、アメリカへ視察に行くことです。もちろん、分野によってはアメリカではなくヨーロッパや中東、アジアにそのヒントがあるのかもしれません。視野を広く持つことは、熱くなった自分の思いと現実を冷静に見比べ、検証する姿勢は起業家には欠かせない資質です。


「発見」のほかにもう一つ大切なことは、企画書や計画書を一度つくったら、それに固執せず、常に書き直すことです。不確実性の高い現代においては、ビジネスモデル自体を常に書き直していくことも大切でしょう。答えは一つではないはずです。思考が硬直しないよう、常に柔軟であることが成功確率を上げることにつながります。


そして一度起業して、それをある程度の形にしても、自分だけの経営資源ではその事業の成長性の限界を見たときに、優れた連続起業家はその事業を有効にシナジーを産む企業に売却します。もしくは、人に任せて自分は次の新しい事業に着手するのです。その事業自体を、本業のなかに組み入れると数倍の価値を生むという企業に高く売却してしまって。そして売却して得たまとまった手元資金で、また新しい大きな事業を立ち上げようとするのです。


このスパイラルな成長の繰り返し。正に連続起業家の言われです。これこそが、本物の起業家魂を持つ起業家と言えるのです。